袋いらんいらん詐欺


一点の曇りもないお休みがほしい。

・・・・・・

夜遅く、スーパーのレジ、私の前はヨタヨタしたおっちゃん。
帽子と髪の毛の境がよくわからない頭のその人は、缶入り酎ハイひとつと菓子パンをカゴに入れずカウンターに置いている。
歯がぐしゃぐしゃで、口はもごもご動いている。

「袋はお持ちですかぁー?」とレジ係のお嬢さんが高らかに聞く。
もごもご、と口を動かして、あいまいに手をふるおっちゃん。
「ご協力ありがとうございまぁす。2円お引きしまーす」
このスーパーではレジ袋いりません、というと2円引いてくれるのだ。
「189円になりまーす。ありがとうございましたー。」缶チューハイとパンにシールを貼りながら、
レジの女店員はいそいそと次へいこうとした。
しかしおっちゃんはどかない。もごもごと口を動かしながら立ったままだ。
そして手をふらふら振ってどこかを指さしている。
え?と怪訝なレジの人。不思議な間。
おっちゃんのぶるぶるの指先、それを心の点線で結ぶ…レジ袋だ。
レジ袋の積んである方をひたすら指さしているのだ。
「あ…ありがとうございました…」全く納得のいかない表情で、袋を手渡すレジの人。
おっちゃんは変わらぬ口モゴモゴでのっそり去っていった。

いらんゆーたやん!!2円得してるやん!

私は叫んだ、心の中で。

しかし思い返すに、鮮やかなお手並みだった。
レジ袋不要→2円引く→やっぱり袋いる。
有無を言わせないその指先、まるで仙人のようだ。
新手の、華麗かつスマートなキャッチ・ミー・イフ・ユーキャンだった。

(完)

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