美術館はしご

先週(だったっけ)、秋の長雨の合間を縫って上野へ、フェルメールとヴィルヘルム・ハンマースホイ展をはしごした。
長時間並ぶことになるようだったらやんぺ、と思ってだらだら金曜の夕方に行ったら、夜8時まで開館なことがまだ周知されていないのか、とても空いていた。
フェルメールの展示部屋だけ人が多かったけど、それなりにじっくり見られてよかった。
宗教画が2枚あったけど、やっぱり風俗画がいいですね。
「ワイングラスを持つ娘」はちょっと怖い絵だな。
帰りに図録買おうと思ったら1階では買えなかった。あかん仕組み。

それにしても毎度思うのは、こういう古典作品がTシャツやマグカップにプリントされていることの不思議。
べつにそれに文句はないけど、フェルメールが見たらどう思うかなとか想像するとおかしい。その場でバク転するほどびっくりするだろうな。

時間に余裕があったので、ハンマースホイ展へ。

これがなかなかよかった。
静かな部屋の、静かな後ろ姿という主題が美しく、不思議な空気感に満ちている。とても写真を思わせる絵だなあと思ったら実際写真をもとに描いているものが多いらしい。それを知ってみると、ちょっとだけ興がそがれた。ちょっとだけだけど。
妻や妹などの女性が後ろ姿で多く描かれているのだが、その髪の量感や白いうなじ、黒くゆるやかな背中などの対比に、正面向きよりも多くの表情を読み取ろうと絵の中に入り込まされてしまった。
同じ部屋の、わずかな光の違いをひたすら描いているような作品もあり、自然の壮大な美しさとは全く違う、身近な時間や空間への興味がうかがえて面白い。
あくまで色は少なくストイックで、光と影の微妙な美しさが静謐さを画面に与えている。このアプローチがとても写真的だと感じる。

ハンマースホイの数々の部屋の作品から、彼の住んでいた部屋を3D再現したCGも展示されていた。
気持ちはすごくわかるし、手間を考えると申し訳ないけど、ぜんぜん興味がわかなかった。

ところで、映画を見ると、なんとなくその映画のイメージが乗り移ってしまうことがあるけど、この日も同じ現象があった。
フェルメールを見終わって館を出たら、たまたま倉庫のようなところから掃除の人が出てくるところに出くわした。
年配の女性が腰を曲げ、小さな部屋のぽっかり穴のように空いた暗闇を背景に、うつむいてほうきか何かを取り出している。その暗闇に映える上着の青さ、三角巾の白さといったら。
たまらなくフェルメールちっくな風情だったのです。

その後入ったカフェで、大きなソファー席で店内を一望できる位置に座ったのだが、窓際でひとり茶をすする若い女性のその後ろ姿。これもハンマースホイの絵のように見えたのだから、自分の単純さに呆れつつも、こういうのも楽しいかな。

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