#新聞記者みた

面白かった。まず怖い。
ホラーなら、客電ついて怖かった〜って苦笑いして現実に戻れるが、この映画が怖いのはその悪夢が現実と地続きだから。
でもこれは見終わってすぐの感想。10日以上経って、なんども映画のことを思い返しているうちに、だんだん変化してきた。この映画、本当に怖いのかな。これは滑稽といったほうがいいのかもしれない、と。

映画を見た帰り、駅の本屋に寄ったら「新聞記者」角川新書はなく、「内閣府調査室」という新書があった。目次を見ると、CIAだのアジアの危機だの豪華な話が並んでいる。
でも映画の中の内調ってず〜っとTwitterばっかしやってへんかったっけ?
いやもちろん映画ではそういう面を特に見せてなかっただけなんかも知らんけど。

「国の安定を守る」と言いながら、霞が関のお歴々が守ってるのは確実に自分の身。やってることは現政権に批判的な人物の揚げ足とり、スキャンダル作りばっかり。それもTwitter(無料)に依存して。超絶せこい。そんなの「国民」のためではない。大げさな調査室で税金で大量に人を雇ってやることか。現実もこれに近いとすれば、映画での内閣調査室は美化されていると言えるのかもしれない。

だからこの話はブラックコメディーみたいな映画にもなりうる。
どんなに田中哲司が静かに睨み効かせてても、ゆーてること「ネトサポに伝えろ!」ですもん。内閣Twitterer室みたいな話。
(この辺は、映画「主戦場」のラスボスの、「正体見たり…」などんでん返しともいえる意外性と通じるものがあって面白い)

ところで、松坂桃李もシム・ウンギョンもほんと素晴らしかったのだが、主人公の女性記者を「韓国人と日本人の両親を持つアメリカ育ち」に設定した理由はなんだろうと最初は不思議だった。パンフを読んでももうひとつ理由がわからず。

見終わっていろんな感想を読んでいると、批判的な意見では、記者クラブが描けていないなど、現実的な描写が弱いとか違う、というのが多かった。
その感想を読んでいて、なぜ主役が外国人女性だったのかわかったような気がした。日本の女優が演じていたら著書の望月さんを思い浮かべてしまうし、現実そのまんますぎる。フィクションとしての面白さが半減してしまったら、映画としての魅力や強みがなくなってしまう。
以前園子温監督が「希望の国」を撮った時インタビューで「ドキュメンタリーでなくフィクションだからこそ描ける現実」という話をしていたのを思い出す。

ただわたしはあの映画の世界は明らかに、閉鎖的で権力者に取り込まれやすい日本の記者クラブという背景があってこそ成り立つ世界だったと思うし、その恐ろしさ、危機をよく表せていたと思う。描いていないだけで、「描けてない」とは思わない。

でも冒頭から現存する人物が本人として出てきたり、実際にあった準強姦もみ消し疑惑や、行政府の職員の自殺などを絡めているせいで、ドキュメンタリーとして見てしまうような混乱が生じやすいのかなとも思う。特に実在する人物がその本人そのものとして出てくるのは賛否分かれるのかもしれないが、私はすごく面白かった。ここで主役の吉岡エリカが日本の女優でないことが活きる。

モニターの中で望月さんが日本のメディアの問題を語っている、それを見つめる映画の中の「望月記者」が、黙々と付箋に英語で書き込みをしていて、そのペンの音だけが響いている、という冒頭のシーンはなかなかワクワクしたが、これが日本の「面の割れた」女優さんだとメタ構造の面白さもなく、しらじらしく感じたかもしれない。

映画「新聞記者2」もあったらいいな。できなくもないと思う。いま公開少し前に出版されたらしい「同調圧力 (角川新書) | 望月 衣塑子, 前川 喜平, マーティン・ファクラー 」を読んでいる。

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