ねこさらい

近所のアパートから猫を抱きしめた年配の女性がゆっくり出てくるところに鉢合わせた。
「みつかったんですか!」と思わず見ず知らずのご婦人にむかって声をかけてしまった。
1ヶ月ほど前に「猫が行方不明」の手書きポスターを、そこで見たのが気になっていたのであーる。
ポスターの猫はそのアパート前の道でしょっちゅう寝そべっていた猫で、片目がなかった。いつ出会っても擦り寄ってくるので私ら夫婦は「ナツキ」と勝手に呼んでいた。
「この子はね、10日もいなくなっていたけど戻ってきました」ご婦人はふつうに答えてくれた。
そっから立ち話。10分は。
最近は動物実験用や三味線用に、猫をまとめてさらっていく人がいる、という。
「三味線なんかいまだにあるんですか?」
「この子は去勢したからね、使えなかったんですね、それで捨てられてたの。警察のところに。」
アパートからその警察署まではたぶん10キロは離れている。よくみつかったなあと頭をなでてやる。
人間二人が自分の話をしていることにすっかりご満悦のよう。頭をうしろへそらし腹を出してご婦人の腕に甘えている。
「あの子はこの子のおにいちゃん。こら、チー!おりてらっしゃい、チー!」
すぐ横の建物のひさしの上で、うでをのばしてなめなめ、別の猫がくつろいでいた。無視だ。
生きている猫をさらうなんてねえ、とご婦人は嘆くこと仕切り。怪しい人はみんな警察に言えばいいんですよ、わたしは車のナンバーとか全部メモしてる。1ぴきにつき100万、えさをあげるのを邪魔しても50万罰金なのよ。
ほんまかなあ、と思いながら最近そういや近所のノラも見なくなったなあと考えてたら、
チーがいつの間にか足元にいて「なんだよ呼んだから来たのによ」という顔でにゃーとないた。

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